【図解】なぜトンネルの照明はオレンジ色?|光の色に隠された3つの理由を建築の視点で解説

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「どうしてトンネルの中はオレンジ色なんだろう?」
そう思ったことはありませんか?

トリニてぃ
トリニてぃ

実はあの光の色には、「安全性」「視認性」「省エネ性」を両立させるための理由があるんです。

トンネルの照明は、運転の安全や省エネを支える“建築と照明設計の知恵”の結晶でもあります。

この記事では、トンネル照明がオレンジ色である理由を、建築の視点からわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • トンネルでオレンジ色の光が選ばれている理由
  • 人の目の特性と光の関係
  • かつて使われていたナトリウムランプの特徴
  • 現在のLED照明でもオレンジ系が採用される安全上の理由

はじめに結論をお伝えすると、トンネルの照明にオレンジ色が多いのは、もともと使われていたナトリウムランプの光がオレンジ色だったためです。

しかしこれは、単なる色の違いではありません。
人の目の仕組みや環境条件に合わせて最適化された、“安全のための光のデザイン”なのです。

トンネル照明がオレンジ色なのは3つのバランス

車でトンネルに入ると、外の白っぽい光とは違う、ややオレンジがかった柔らかい光に包まれます。

この色には、実は「なんとなく」ではなく、人の目と環境に合わせた明確な理由があります。

トンネル照明に求められるのは、単なる明るさではなく、

  • 運転中に見やすいこと(視認性)
  • 長く使えること(耐久性)
  • 安全に通行できること(安全性)

この3つのバランスです。

昼夜を問わず、車が高速で出入りするトンネルの中では、ほんの一瞬の見えづらさが事故につながることもあります。

そこで選ばれたのが、目に優しく、エネルギー効率も良い「オレンジ色の光」

一見、感覚的に決められたように見える照明の色にも、建築照明計画の考え方や人間工学的な配慮が詰まっているのです。

それぞれの理由を、順番に詳しく見ていきましょう。


理由➀|急な明るさの変化に対応しやすい

ポイントまとめ
  • 明暗の変化による「ブラックホール/ホワイトホール現象」を防ぐ
  • 暗順応に時間がかかる人の目に合わせた設計
  • オレンジ光がまぶしさをやわらげ、視界を守る

トンネルに入る瞬間、外のまぶしい光から一気に暗い空間へ入ると、一瞬「何も見えない」ような感覚になることがあります。

これを「ブラックホール現象」と呼びます。
逆に、トンネルを出るときに急に外の光がまぶしく感じるのは「ホワイトホール現象」です。

私たちの目は、周囲の明るさに合わせて暗順応(暗さに慣れる)明順応(明るさに慣れる)を繰り返しながら、視界を調整しています。

しかし、人間の目は明るさに慣れるよりも、暗さに慣れるほうが時間がかかるという特性を持っています。

そのため、トンネルの入り口付近では、急な明るさの変化によって視界が一時的に失われる危険があります。

そこで活躍するのが、オレンジ色の照明です。

オレンジ色の光は、白色光に比べてコントラストがやわらかく、グレア(まぶしさ)を抑えながら視界を確保できます。

結果として、運転者の目への負担を減らし、外から中へ、または中から外へと移動するときの“見えにくさ”を軽減してくれるのです。


理由②|ナトリウムランプは省エネで長寿命

ポイントまとめ
  • ナトリウムランプの光はもともとオレンジ色
  • 省エネ・長寿命で、トンネル環境に最適だった
  • 現在はLEDが主流だが、やや暖かい色味を継承している

トンネルの照明にオレンジ色が多いのは、もともと使われていたナトリウムランプの光がオレンジ色だったためです。

ナトリウムランプは、少ない電力で強い光を出せる高効率の照明で、さらに長寿命
メンテナンスが難しいトンネルでは、交換回数を減らせることから非常に重宝されました。

また、ナトリウムランプのオレンジ色は、目にやさしく、照明器具が多少汚れても明るさのムラが目立ちにくいという利点もありました。
こうした理由から、長い間トンネル照明の主流となっていたのです。

近年では、LED照明への置き換えが進んでいます。

LEDはさらに省エネで、寿命も長く、色の見え方(演色性)が自然に近いため、視認性が大きく向上しました。

とはいえ、LED照明でも完全な白ではなく、少し暖かみのある光が選ばれることが多いのは、やはり安全面を考慮してのこと。

白すぎる光はまぶしく、暗い環境から入ると目が疲れやすくなるため、現在でも「ややオレンジ寄りの光」が“最も人に優しい照明”とされています。


理由③|オレンジ色の光は霧や排気ガスの中でも見えやすい

ポイントまとめ
  • オレンジ色=波長が長く、霧やガスに強い
  • かすんだ環境でも見やすく、安全を確保できる
  • 現代でも“見えやすさ”の思想は変わらない

オレンジ色の光は、波長が長く、空気中で散乱しにくいという特性を持っています。
そのため、霧や排気ガス、ほこりなどの微粒子が多い環境でも、光が遠くまで届きやすく、視界を確保しやすいのです。

これは、空が青く見える原理と逆の現象です。
青い光(短い波長)は空気中の分子に散乱しやすいため、青空として見えます。

一方で、オレンジや赤といった波長の長い光は散乱されにくく、まっすぐ進むため、濁った空間でも見えやすいのです。

かつてのトンネルでは、排気ガスがこもりやすく、空気が白くかすむことも少なくありませんでした。
そんな中でも、オレンジ色の光は運転者にとって最も見やすく、安全な色でした。

現代のトンネルでは換気設備が進化し、空気はずっときれいになりましたが、
「どんな環境でも見やすい光」という考え方は、今も照明設計の基本として受け継がれています。


まとめ|オレンジ色の照明は“安全を支える建築の知恵”

トンネルのオレンジ色の光には、“安全を支えるため”の理由がありました。

  • 目が慣れやすい
  • 省エネで長寿命
  • 見通しを確保しやすい

かつてはナトリウムランプ、今はLEDへと照明の技術は進化していますが、その根底にあるのは「安心して走れる視環境をつくる」という考え方です。

私たちが何気なく通り抜けているトンネルの中にも、建築と光の知恵が静かに息づいています。

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